ハイテクインターハイテクインター株式会社

Q. 距離と伝送レートの関係を教えてください。

各メーカー、商社のホームページには様々な表現が見られます。
最大到達距離、公称伝送レート、実効速度、実質スループット、ベストエフォート、「お客様お使いの環境による」等々。
ある意味、全て正しく、しかしユーザからは結局どうなの?という声が聞こえてきそうです。結論から言いますと、「ある距離に於ける伝送レートは帯域幅により、MIMO / SISOかどうかにより、また、見通しの具合で大きく変わる」です。
これではカタログに載せられませんので各社、色々な表現をしています。ここではいくつかのポイントに焦点を当てて考えてみます。

(1)送受信環境(マルチパスフェーデイング)
5GHzでの1波長は自由空間で6cmと非常に短く、周囲の影響を受けて容易に反射し受信側では複数の経路(マルチパス)を通った波が受信されます。場合によっては瞬時に受信電力が10~30dB(1/10~1/1000)変化する場合もあります。これをフェーディングといいます。(周波数選択性やフラットフェーディングの説明は省略します。)周波数選択性フェーディングにはOFDMが、フラットフェーディングには空間ダイバーシティが有効といわれています。
また、距離が数km以上になるとフレネルゾーンも考慮しなければなりません。第1フレネルゾーンに障害物がある場合は、その程度により伝搬損失が大きく変わってきます。

(2)MIMOとSISO
最近はアンテナを2本以上用いて伝送レートを上げる工夫が見られ、これをMIMOと言っています。基本的には各々のアンテナ端から別々のデータを送信することで伝送レートを2倍、3倍としています。ここでもし各アンテナから同じデータを送ると、その伝送レートはMIMOの1/2, 1/3となります。(ここではこれを本来の意味とは異なりますがSISOと呼ぶことにします。)

さてMIMOとSISO各々の機器を対向で通信させ、距離を変えていくとどうなるでしょう。公称伝送レートはあくまでMIMOの方が上です。しかし、実際のフィールド試験では、ある距離になるとSISOのほうがスループット(実質の伝送レート)では高くなります。その理由は距離が遠くなると、受信レベルが低くなり、高い伝送レートが維持できなくなり、かつフェーディングの影響でMIMOから送信されたデータのみでは誤り率が高く(パケットロスが多く)なるからです。SISOでは片方のアンテナの経路でのレベルが変動しても別の経路で受信レベルが確保されれば誤りは発生しません。(これを空間ダイバーシティといいます。)特に2つのアンテナから送信する電波の偏波面をV(大地に垂直)、H(大地と水平)直交させればよりいっそうデータの独立性が保障されます。(これを偏波ダイバーシティといいます。)

(3)帯域幅
5GHz帯の屋外用無線機器(802.11a, 11n対応)の帯域幅は通常20MHz, 40MHzです。弊社が扱っている機器では5MHz, 10MHz設定可能なものもあります。
理論的には帯域幅が2倍になれば、伝送レートも倍になりますが、受信側での雑音レベルも倍(3dBアップ)になりますので、同じ伝送レートを送るには距離が短くなります。つまりある距離からは例えば40MHz帯域幅では急速に誤りが増え、スループットが落ちて、20MHz帯域幅の方が実質の伝送レートが上がる現象が出てきます。常識では帯域幅が広い方でスループットが高いと考えがちですが、それは近距離の場合と考えておいたほうが良いです。

(4)送信電力とアンテナ利得
送信電力やアンテナ利得は総務省令で細かく規定されています。自由にユーザが変えることはできません。(出力パワーの設定を低くすることは可能です。)距離と伝送レートの関係は許容されている最大パワーの設定で表示されますが、量産時のバラツキもあるので、規格では許容偏差として+20%~-80%(または+50%~-50%)が認められています。出力が-80%でパワーは7dB下がることになり、到達距離もその分短くなりますが、メーカーではそのようなことにならないよう工夫しています。

距離と伝送レートとの関係を議論するには、さらにBPSK~64QAMといった変調、SNR(CNR), Eb/NoとBER(パケットエラー)との関係といった無線の知識が必要になりますが本題から外れるので省略します。厳密にはGI(ガードインターバル)の違いもあり、802.11a, 11nの特性の差も理解しなければなりません。
弊社では、以上の議論を踏まえ、極力フィールドテストでの結果に基づいた「距離と伝送レート」の値をカタログに載せています。




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