離島間の遠距離高速通信に成功!(約17km/片方向60Mbps以上、双方向で120Mbps以上)
弊社取り扱いの屋外用4.9GHz長距離無線ブリッジPTP 650について西日本の離島間で約4か月にわたって通信試験を行いました。その概要につきまして説明いたします。
(お客さまとの秘密保持の観点から具体的な社名、設置場所等につきましては非公開とさせていただきます)
1. 設置場所、マスター、スレーブ間距離
西日本の離島間、約17kmでマスター、スレーブともフレネルゾーンを避けるため、20m以上の高さの鉄塔に設置。
(以下の写真はマスター側の例)
図-1
2. PTP 650諸元
表-1
項目 | 内容 |
周波数 | 4920MHz固定 |
帯域幅 | 20MHz |
アンテナ方式 | 内蔵 MIMO(V/H) |
アンテナ利得 | 23dBi |
EIRP | 37dBm |
Link Symmetry | 1:1 |
伝送レート | 最大256QAM適応変調 |
3. 設置期間
2016年6月中旬から2016年10月初旬の約4か月
4. 測定方法と測定パラメータ
東京本社から毎日測定データを吸い上げられるようにモバイルルータ及びVPNを介してPCやPTP 650本体と接続しています。
各パラメータを毎分1回測定できるようにあらかじめMIBの情報を基にバッチファイルを作成し、PC上で動作させます。
この構成により最悪PCがダウンしても、PTP 650に直接アクセスしてマニュアルで各パラメータのデータを取得できます。
以上の構成をマスター、スレーブ側の各々で設置しました。
測定パラメータ:
RSSI, Tx/Rx 伝送レート、EVM, V/Hの差。
さらに毎秒PINGを相手側に送信し結果を毎日記録しました。
5. テスト結果
以下の場合のグラフを示します。
(1)通常の潮の満ち引きによるRSSIと伝送レート変化
(2)台風襲来時
5.1 通常の潮の満ち引きの場合
満潮、干潮が1日当たり2回ずつあります。このとき最大で海面が約3m変化しますが、RSSIは下図のように2dB変化します。
また、伝送レートが66Mbpsから82Mbpsへと変化しています。
上図に示すように全くと言っていいほど台風の影響を受けていません。
6. カタログ値及び理論値との比較
6.1 RSSI
ハイトパターンや潮の満ち引き、海面反射を無視した単純な計算では17kmで-70.9dBmです。また、開発メーカーのLink Plannerというシミュレータを用いた場合、-71dBm+/-5dBです。実測値は-70dBm+/-1dBでかなり予測値と合っていると思われます。
6.2 伝送速度
カタログではRSSI、伝送レートの関係が下記のようになっています。
表-2 20MHz BW Tx:Rx = 1:1
変調 | 伝送レート[Mbps] | RSSI 閾値[dBm] |
64QAM Dual 0.92 | 84.3 | -67.9 |
64QAM Dual 0.75 | 68.9 | -71.9 |
実測値では潮の満ち引き(RSSI変化)で66Mbps~82Mbpsの間で変化しています。
変調は、実際には常に送られる疑似データからEVM(Error Vector Magnitude)を受信側で計算し、その情報を送信側へ送って変調をコントロールしています。
つまり、RSSIが良くてもマルチパス等の影響でEVMが劣化すると変調を64QAMから16QAMへと変化させて通信を安定させています。
EVMの閾値はメーカー独自の設定になっており公開されていません。
また、Link Plannerのシミュレーションでも平均63.8Mbpsが得られています。
7. まとめ
今回は、2枚のアンテナを離して設置する空間ダイバーシティの測定は行いませんでしたが、何らかの原因でVまたはH側のRSSIが減っていった場合、Dual(MIMO)からSingle(SISO)になります。このときV, Hからは全く同じデータが送信されます。また、受信側ではどちらか一方を選択するのではなく、最大比合成で低いRSSIの信号も効率よく利用しています。
結果的に1枚の外付けアンテナで(もしくは内蔵アンテナ)で極端に受信レベルが下がり伝送レートが大幅に下がるよりはダイバーシティでSingle Modeにして伝送レートを確保する方が通信の安定性が増します。
今回、お客さまのご協力を得て、PTP 650について西日本の離島間で約4か月にわたって通信試験を行い、非常に良好な通信が確保されることを立証できました。
(図-2、図-3の伝送レートを1年間保証するものではありません。フェーディング等で伝送レートが下がる場合があります。詳細はお問い合わせください)
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